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相続法改正について考える 【弁護士 後藤 寬】

1 昨年,相続税の改正が実施されたこともあり,相続に関する記事や解説が以前より目につくようになりました。相続法についても,現在改正が検討されており,相続税と同様に関心が高まっています。今回の改正は,1980(昭和55)年の改正(配偶者の法定相続分の引き上げや寄与分の導入が行われました。)以来の大幅な改正と言われています。議論のきっかけとなったのは,平成25年最高裁が,従前の民法900条4項但書前半部分の規定(婚姻関係にない父母の子である非嫡出子の相続分を婚姻関係にある父母の子である嫡出子の2分の1としていたもの)が憲法に違反するとしたことにあると言われていますが,最高裁が違憲とした同条項はすでに改正(削除)されており,今改正が検討されているのは,その他の事項で長年裁判実務などで矛盾や不都合が指摘されていた事項です。

 

2 すでに法務省からは,中間試案が発表されており,一般からの意見公募を終えた後,審議が再開される予定です。ここでは,中間試案の概要から改正が検討されている事項を簡単にまとめてみます。

(1)配偶者の居住権を保護する制度の新設

  現在も,被相続人と一緒に居住していた法定相続人が,遺産分割が成立するまでの間(一定の要件の下),無償でその建物に居住する権利を認める判例はありますが,配偶者には,遺産分割協議終了時まで,あるいは一定の期間もしくは終身居住する権利を明文化する案が検討されています。

(2)遺産分割に関する事項

  前記のとおり,これまでも配偶者に法定相続分の引き上げなど一定の見直しはなされてきましたが,なお,配偶者の貢献が十分に反映されていないとの見地から,被相続人の婚姻時の財産が婚姻中に増加した場合には配偶者の相続分を増やす,あるいは一定期間以上の婚姻関係が継続していた配偶者の法定相続分を増やす(長期間の婚姻関係が継続した配偶者の優遇)といった案が検討されています。

(3)遺言制度の見直し

  現在,遺言は自分で作成する自筆遺言証書は,いつでも手軽に作成できるという利点がありますが,反面,全文を自書しなければならないなど,法律の定めたいくつかの要件が守られていないと無効とされてしまうおそれがあります。そこで,遺言の一部は自書ではなくパソコンでの作成も認めるなど要件を緩和する案が出されています。

(4)遺留分の返還(清算)方法の見直し

  被相続人が遺言で法定相続人にまったく財産を取得させないとした場合でも,兄弟姉妹以外の法定相続人には,遺留分として,一定の相続分が権利として認められていることはご存じの方も多いかと思います。現在の制度は,遺留分権利者に遺留分相当分として返還する場合,現物で返還することが原則で,金銭(現物を評額)での返還は例外とされていますが,これを,金銭での返還を原則として現物返還を例外とするものです。遺産に不動産があれば,遺留分の割合,たとえばそれが6分の1であればその不動産の持分6分の1を遺留分権利者に返還することになりますが,遺産をめぐって対立状態にある相続人間で不動産を共有することになっても,その不動産の処分や管理をめぐって紛争が続くことになりかねず,そうした事態を解消するためといえます。

(5)相続人以外の者の貢献(介護等)を考慮する制度を

  前記のとおり,1980年の改正で寄与分という制度が導入されましたが,あくまで相続人に限られた制度であり,法定相続人以外の者が被相続人に特別の貢献をした場合でもそれを相続に反映する制度がありません(被相続人がみずからその者に遺産を取得される旨の遺言を作成する方法をとるしかない)。長男の妻が義父の介護をしていた場合にも何の(相続の)権利もない,といった例がよく挙げられます。長男が健在であれば,長男が相続人としての権利を行使することで,事実上妻が義父の遺産を取得したのと同様の結果を得ると考えられる場合もあるかもしれません。義父の所有していた自宅を長男が相続取得すれば,妻もそこに居住することができますし,将来夫が死亡すれば妻は,長男が義父から相続で取得した財産を長男の配偶者として相続により取得できる可能性があります。

  しかし,仮に,長男との間に子がおらず,かつ長男が義父より先に死亡し,義父がその後死亡したケースを考えると,義父の法定相続人は長男の兄弟姉妹(もしくはその子)になります(兄弟姉妹がいなければ,法定相続人は存在しないことになります)。この場合,妻は義父の遺産を法律上はもちろん事実上も取得することはできません。

  試案では,こうした場合,特別の貢献として相続人以外の者にも一定の請求権を認めようとするものです。

  ただ,現行の寄与分も「特別の寄与」と認められることは必ずしも容易ではなく,自分は親と同居して他の相続人より介護した,といっただけでは,子としても扶養義務の履行をしたにすぎないとして特別の寄与とは認められないことが多いようです。同じように相続人以外の特別の貢献もどのような場合に権利を認めるのか,寄与分と同様の基準となれば,権利が認められるのは想像以上に難しくなる可能性もあります。

 

3 相続は親族間の紛争という側面があり,財産的要素だけではなかなか解決しない難しいところがあります。法律が定める内容は,どうしても一般的抽象的な要素は避けられず,それだけに法律を機械的に適用したのでは,具体的な事件の解決内容としては疑問を感じることも少なくありません。そのために具体的な事件に法令をどのように適用していくのかについては,裁判所に権限が与えられているわけですが,そうはいっても法令の解釈にはおのずと限度があり,法令に明らかに違反した判断は許されません。そうした意味では,法律に不具合があれば,当然改められる必要があり,今回の相続法改正が相続紛争の予防や真に公平な解決に資することを期待するとともに,私たちもまたご相談やご依頼いただいた方のお気持ちに沿った解決を図ることができるよう努力したいと考えておりますので,どうぞ,お気軽にご相談ください。

弁護士活動コラム   2016年10月27日   admin