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「ふるさと」と福島原発訴訟~現地検証,本人尋問が終了し,10月10日判決です~ 【弁護士 塚本 和也】

 

第1 私の「ふるさと」

 先日,お盆のため,ふるさとの島根県隠岐郡西ノ島町に帰省しました。私が中学生の頃の人口はたしか3500人ほどだったのですが,現在は2900人弱となっています。そんな過疎化の進む町ですが,お盆の時期にはたくさんの人が帰ってきます。父が先祖代々の畑で作った野菜や,親戚の人からおすそ分けされた魚やアワビ,サザエなどを堪能しました。また,伝統行事として,盆踊りとシャーラ船送りがありました。特に,明治以来続けられている,「シャーラ船送り」とは,地元の中学生と大人たちが協力してワラや竹などで作り,集落の各家でお供えされたカラフルな紙で飾りつけられた船で,海に流し,先祖の精霊が乗って帰るといわれている行事です。これを見ると,帰ってきたなと実感します。また,盆踊りやシャーラ船送りにはたくさんの人が集まり,ほとんどの人が知合いなので,たくさんの交流ができます。私は会う人みんなに,太ったな!と言われたので,ダイエットの決意をしました(何度目かわかりませんが…)。

 

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(シャーラ船送り)

 

第2 「ふるさと」と「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟

 さて,このように「ふるさと」は多くの方にとって大切な場所だと思いますが,ご存じのとおり,福島原発事故により,現在もふるさとから避難を余儀なくされている方が少なくとも約8万人おられます。ふるさとから上京して,ときどき帰省されていた方を含めると,この数倍はおられると考えられます。

 以前コラムでご紹介した「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(http://www.tobu-law.com/bengosi/archives/90)は,今年3月に結審し,10月10日に判決が言い渡される予定です。

 一昨年から昨年にかけて実施された代表原告35人の本人尋問のうち,私が当事務所の加藤弁護士,鹿島弁護士とともに担当した原告の方は,楢葉町から葛飾区に避難されている方です。この方は,15歳で地元を出て約20年間そば屋できびしい修行をした後、地元に戻って自分の店を構え、地元の水を使ったり,早朝から採った山菜,川魚を天ぷらにしたりして満足のいく蕎麦を提供していました。私生活上も、家庭を築き、マイホームも建てて、子育てもようやく終わろうとしつつありました。少しずつ積み重ねてきた幸せな人生が、本件原発事故によって、全部ひっくり返されてしまったのです。避難生活中に2人の子どもは精神的な病気になってしまい,苦しんでいます。楢葉町の避難指示は2015年9月に解除されましたが,住民の帰還率は約8%(当時)で,若い人はほとんど帰っていません。「たとえ楢葉町に帰還して蕎麦屋を再開したり、または新しい場所で開業したりしたとしても、被害が終わるわけではない。元のふるさとが戻ってくるまで、被害は終わらない。」ということを訴えていただきました。

 昨年3月には,裁判官が浜通り地域の被害地を訪れ被害実態を確認する現地検証が行われました。国と東京電力は必要性がないと猛烈に反対していましたが,私たちは,浜通り地域の復興の遅れ,動物によって荒らされた住居の匂い,人がいなくなって音がなくなった街などについて,裁判官に全身で感じてもらうことは,被害救済のためには必要不可欠であると考え,主張を続けてきた結果,全国で初めて実施されました。避難指示区域内では,裁判官を含め検証参加者はみな防護服を来て,立入許可をとり身分証を提示して入りました。私はマスコミ対応班として参加しましたが,とても緊張感のある1日でした。

 さらに,昨年5月には中通り地域での仮設住宅や保育園,農家などの現地検証も実施されました。避難指示区域でなくとも,被害があることを訴えました。私が一部担当した果樹園では,木の除染はしても,土の除染は大切な根が浅い部分に広がっていることなどからできていないこと,雨どいの下などホットスポットの存在を説明しました。小雨の降る中でしたが,裁判官は合羽のフードを被らずに聞いていました。

 私は福島で司法修習をしていた2014年から何度も弁護団の検証準備に同行しており,現地検証が無事実施されたことはとても感慨深いことでした。

 裁判所には,原告の方々や現地の状況から感じた被害と真摯に向き合い,原状回復,現状の賠償基準の面的,量的拡大,特に「ふるさと」喪失慰謝料を認めてほしいと思っています。

 

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(富岡町夜の森の桜並木,全長2㎞の大半はいまだ避難指示区域)

 

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第3 今後の取り組み

 今年3月,前橋地裁で福島原発事故被害に関する集団訴訟で初の判決が言い渡されました。国の法的責任,東京電力の非難性を認めた画期的な判決です。ただ,慰謝料の認められた人の範囲や金額については十分とはいえません。特に避難指示区域の原告の方については,これまでの賠償で十分だとほとんど棄却されてしまいました。

今年3月末には,浪江町や富岡町の避難指示解除準備区域と居住制限区域の避難指示が解除されましたが,帰還率は数%と言われています。現在の避難指示解除の基準では,元の「ふるさと」がかえったといえないことの表れです。しかし,来年3月末には,現状の不十分な避難慰謝料でさえ打ち切りが予定されています。

 昨年3月,私は葛飾区で生業訴訟についての学習会を行いました。また,春ごろには生業訴訟を支援してくださっている井上監督の映画『大地を受け継ぐ』を多くの人にお勧めして観ていただきました。さらに,9月には,墨田労連の方々と1泊2日で浜通りの視察ツアーに行ってきました。現地検証と同じ場所や,避難指示解除直後の南相馬市小高区などを訪れ,夜には生業訴訟原告団長の中島さんと交流しました。参加者の方からは,あまり報道されていないため,知らないことが多かったとの感想をいただいたり,カンパをいただいたりしました。

 今年に入ってからは,裁判所に対する公正な判決を求める署名を集めています。

 私たちは、このような法廷外の取り組みに一緒に取り組んでいただける仲間をどんどん増やしたいと考えています。ともに声を挙げ、原状回復や全体救済、脱原発を進めましょう。今後ともあたたかいご支援をよろしくお願い申し上げます。

 

【参考】

「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団・弁護団

 HP:http://www.nariwaisoshou.jp/

 フェイスブック:https://www.facebook.com/nariwaikaese

 

弁護士活動コラム   2017年08月31日   admin
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