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読書日記1 【弁護士 中西 一裕】

 弁護士活動をしていると通勤時間だけでなく裁判所や弁護士会等への移動時間、裁判や接見の待ち時間など結構空き時間があり、読書に充てるとかなりの本が読める。

 以前は鞄に重い本を何冊も入れて持ち歩いていたが、最近は電子書籍をスマホやタブレットで読むことが多い。特に、明治大正の文豪の本は多くが「青空文庫」で無料で読むことができる。スマホの中に漱石全集や鴎外全集が入るというのは感動ものである。

 以下、最近読んだ本を何冊か挙げる。

 

○『国家の神話』(エルンスト・カッシーラー)

○『ホモ・ルーデンス』(ヨハン・ホイジンガ)

○『否定と肯定』(デボラ・E・リップシュタット)

 これら3冊の共通項はナチズムとの闘いである。『国家の神話』は学生時代に読んで感銘を受けた本であり、哲学・思想史の大家による渾身の同時代批判の書である。特に、第3部の「20世紀の神話」は現代の社会・思想状況にも通じる問題提起が含まれている。『ホモ・ルーデンス』は「遊びの相の下に」人類の文化と歴史に光を当てる斬新で示唆に富む名著であるが、最後まで読むとユーモアとフェアプレーの精神を失い「文化的小児病」と言うほかないナチズムの席巻が批判されていることがわかる。この2冊は1930年代~40年代のまさにナチズム勃興期に書かれている。

 他方、『否定と肯定』は副題が「ホロコーストの真実をめぐる闘い」で、映画化もされた最近の著作であるが、ホロコースト研究者の著者がホロコースト否定論の歴史家から名誉毀損裁判を提起された裁判実話である。アメリカとはまた異なるイギリスの裁判の実情が詳しく描かれて興味深いが、歴史修正主義との闘いが困難ではあるがいかに重要かがよくわかる著作といえる。

 

○『ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争(上・下)』(デイビッド・ハルバースタム)

 これは朝鮮戦争をアメリカの視点から描いた作品で、著者はピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストである。これを読むと朝鮮戦争はアメリカにとっては思い出したくもない「忘れられた戦争」であったことがよくわかる。朝鮮戦争は金日成の野心から起こされたが、ソ連も中国もアメリカとの衝突は避けたい意向が強く参戦には及び腰で、他方、アメリカもマッカーサーの楽観論とスタンドプレーに振り回されて苦戦を強いられた結果、38度線の停戦合意に至る。この間、北朝鮮の核問題でにわかに朝鮮半島危機が語られたが、過去の朝鮮戦争を振り返ってみることは有益であろう。

 

 今年2月に亡くなった石牟礼道子の著作もあらためて読んでみた。

○『苦海浄土』

○『椿の海の記』

○『西南役伝説』

 『苦海浄土』は言うまでもなく水俣病被害を現地から告発した名著であり、今なおその訴える力は色あせない。とりわけ、重度の障害を負った子どもやその家族の苦難を描きながらも、ユーモアを交え人間の尊厳を強く感じさせる描写が見事である。『椿の海の記』は水俣病問題が起きる前の豊穣の海に暮らす水俣の人々と生活を描いた珠玉の作品、『西南役伝説』は西南戦争を薩軍が通過する熊本地方の農民の観点から描いた異色作で、100歳を超える古老からの聞き取りの形式と方言の味わいが素晴らしい。

 

 このほか、ミステリーや推理ものとしては北欧やドイツのミステリー小説をよく読む。異色の主人公リスベット・サランデルが活躍する『ミレニアム 3部作』(スティーグ・ラーソン)や『刑事ヴァランダーシリーズ』(ヘニング・マンケル)など、面白いだけではなく社会問題に向き合う重厚な作品が多く、読み応えがある。

 

 ちなみに、最近は読みっぱなしではなく書評も書くよう心がけている。といっても、ブログを立ち上げるのは面倒なのでamazonのレビューである。ここで紹介した本もMt.Crowのペン・ネームでレビューを書いているので、興味がある方は読んでいただけると幸いである。

弁護士活動コラム   2018年10月22日   admin
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