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構造計算書耐震強度偽装事件について行政責任に関する1私見

2005/11/30 弁護士 鳴尾節夫
 
 

(1)建築手続きの流れ

建築計画
 ↓
確認申請書の作成(建築士の設計)と建築確認申請
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建築確認(※指定確認検査機関)と確認済証の交付
 ↓
工事着工(建築工事届と建築士の工事監理)
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中間検査申請と指定確認検査機関による中間検査(※)
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工事完了と完了検査申請
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指定確認検査機関による完了検査(※)と検査済証の交付と建築士に工事監理報告書
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使用開始

 

 

(2)チェック機能が機能せず、行政側に重大な落ち度が存在した可能性が高い。

 

 指定確認検査機関によるチェック


 この指定確認検査機関による確認業務は地方自治体(本件では墨田区)の事務とみなされ(最高裁平成17年6月24日決定),このチェックに重大な落ち度が存在すれば,墨田区のミスと判断される可能性が大きい。因みに指定確認検査機関(法人である場合はその役員)及びその職員が確認業務に従事する場合は,刑法その他の罰則の適用については,法令により公務に従事する職員とみなされている(みなし公務員,法第77条の25第2項)。
 ところでそもそも建築物の安全性を守っていくためには,建築確認や検査の充実が必要不可欠である。そのためにこそ建築基準法は特定行政庁である建築主事(建築基準法第6条1項本文,同法第4条,以下建築基準法を単に「法」という)または指定確認検査機関(法第6条の2)による確認検査業務を実施することにしている。申請された計画が建築基準法に適合しない場合にはその旨申請者に対し通知すること(法第6条5項)になっており,適合するか否かのチェックが建物の安全性を確保する上では極めて重要となる。
 

②特定行政庁によるチェック


 さらにまた確認検査済証を交付したときは,その旨を特定行政庁(本件では墨田区長)に報告することとされ(法第6条の2第3項),当該建物の建築計画が建築基準法関係規定に適合しない場合と判断するときは,建築主及び指定確認検査機関に通知するし,この場合は交付済みの確認済証は失効し(法第6条の2第4項),工事着工はできなくなる(法第6条第6項)。つまりここでも墨田区のチェック機能が極めて重要とされているわけである。
 

③指定確認検査機関による中間検査のチェック


 平成7年1月の阪神・淡路大震災において,施工の不備が原因とされる建築物の被害が多数みられたところから,こうした被害が生じないようにするために,施工中の検査実施が重要であるとされ,平成10年に建築物の安全性の確保と違法行為の未然防止を目的に,定められた特定工程につき中間検査制度が定められた(法第7条の3)。

 指定確認検査機関が中間検査を行った場合には,その旨を建築主事に報告し,検査結果の合否を特定行政庁(本件では墨田区長)に報告する定めとなっている(法第7条の4第6項)。その結果建築基準法関係規定に適合しないという報告であったときは,特定行政庁は速やかに当該建物の徐却・改築等是正命令等の措置を講ずることとされる(法第7条の4第7項,第9条第1項または第10項)。
 従ってこの中間検査にかかわる指定確認検査機関の業務はきわめて重要であり,ここに重大な落ち度があれば,これも墨田区のミスとしてその法的責任を問われる可能性が極めて高い。

 

④指定確認検査機関による完了検査のチェック


 建築主は確認を受けた建物の工事完了により,完了検査の申請をし,建築基準法関係規定に適合している場合は,検査済証を交付し(法第7条第4項,第5項,法第7条の2第1項,第3項,第4項,第5項),適合しない場合は特定行政庁(本件では墨田区長)にその旨報告する(法第7条の2第6項,第7項)。報告を受けた特定行政庁は,建物の徐却,改築等の是正命令等の措置を講ずることとされている(法第7条の2第7項,第9条第1項または第7項)。

 以上のとおり,墨田区は建物確認時,その報告時,中間検査時,完了検査時,その報告時というように3重4重にチェックをなす機会があったのであり,報道されるとおり,構造計算書の前半部において,算出された地震時応力(地震時に建物にかかる力)の数値が,構造計算書の後半部において,この数値を実際に使う部材を決める断面算定での地震時応力が異なる低い数値を使っているとしたら,これは当然確認段階でのチェックが見抜けるはずであり,これを見落とした落ち度はきわめて重大なものがある。

 

(3)墨田区の責任の存在

 一級建築士によれば,正規の地震時応力を入力した構造計算書と,予め半分以下の地震時応力を入力した構造計算書,の2種類を用意し,それぞれ前半部分と後半部分をくっつければ簡単に偽造が可能だとされており,このような初歩的な偽造すら見抜けなかった民間の検査機関とその指定確認検査機関を監督する法的立場にあり且つ当該検査確認自体墨田区の事務と判断される墨田区の法的責任は免れがたい。

 指定確認検査機関たるイーホームズのおこなった確認業務は最高裁決定でも明らかなとおり,墨田区の事務と判断されるところであり,またいわゆる処分性(公権力の行使)を有すること論を待たないところであって,その確認業務に重大なる落ち度が存在し,それが当該建物の耐震強度が建築基準法により求められている強度の31%しか満たしていないのであり,震度5でも倒壊の危険が指摘されているのであるから,当該マンションに居住している住民はもとより,付近住民の生命,身体,財産に対する明白なる危険が切迫している状況であることは明らかであって,国家賠償法第1条第1項に該当するものと判断される。

弁護士活動コラム   2005年11月30日   admin
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