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江戸川区スーパー堤防差止等裁判 【弁護士 大江 京子】

1 裁判について
 2014年11月12日、東京都江戸川区北小岩地域(「本件地域」)に居住する地権者ら4名は、被告国に対して、18班地区で進められているスーパー堤防事業にかかる盛土工事の差止を、被告国及び被告江戸川区に対して国家賠償請求を求める裁判を提起し、第3回口頭弁論が、2015年8月7日、東京地方裁判所の103号法廷で開かれました(東京地方裁判所民事第28部係属)。
 スーパー堤防事業に関して国が被告となったのは、本件の裁判が初めてです。
 この裁判で、原告は、
① スーパー堤防整備事業による盛土工事により、原告は多大な損害を受けていること
② 国には、本件土地上でスーパー堤防工事を行う法的権限がないこと
③ スーパー堤防は、治水効果はなく、不必要不合理な事業であること
 などを理由に、スーパー堤防工事の差止(中止)を求めています。
 
2 スーパー堤防工事は原告らに深刻な被害を与えていること
  本件地区で進められているスーパー堤防事業は、本件地区(1.4ヘクタール)全体を盛り土整備し傾斜地とすることから、
① 整備が終わるまでの数年間は、本件地域から退去して仮住まいを強いられること
② 自宅を取り壊して転居し、再び戻って建物を建て直す負担と2度の移転(引っ越し)を伴うこと
③ 液状化等の危険のある盛土(堤防)の上に住むことを強いられること
④ その他、これまでと比べて高いところに住むことから鉄道騒音の増大による被害があること
⑤ 傾斜地に住むことによる日常生活の負担
など、住民にとっては苛酷な不利益や権利侵害が必然的に伴います。特に本件地区内の住民は、60歳以上の高齢者が41.17%を占めており、高齢者の割合が極めて高い地区であり2度の転居が高齢者に与える被害は極めて深刻です。
 やむを得ず、本件地区から転居した87歳の住民は、「長年暮らしてきた家ですから思い出の品や、愛着のある物がたくさんありました。妻は、思い出として、家の床柱を切断して持っていくことにしました。他にも、持っていきたい物がたくさんありましたが、諦めた物がたくさんありました。私が一番つらかったのは、自宅の庭に生えていた柿の木が切られてしまうことでした。その柿の木は、私と一緒に育ってきた木で、素晴らしい実を実らせ、家族でいつも楽しみにしていた思い出のある木だったのです。引越しをしてから5kgも痩せてしまいました。歩くとふらふらとするようになってしまい、病院に行きましたが、原因はわかりませんでした。」「転居後、新しい家の近所には友人がいない。話し相手がいなくて寂しい。」と落ち込む日々が続きましたと証言しています。
 
3 国にスーパー堤防工事をする権限がないこと
 そもそも、被告国が、地権者である原告らの承諾を得ることなく本件土地区画整理事業によってなされた立ち退き・更地状態を利用してスーパー堤防盛土工事を実施する権限は、法律上何ら存在していません。土地区画整理法80条が、仮換地指定処分の対象となった土地上において許容している工事は、施行者又はその命じた者若しくは委任した者による土地区画整理事業の工事です。被告国(国土交通省)の外郭団体でスーパー堤防事業を推進する立場で報告書や論文を発表しているリバーフロント研究所の研究論文も、「高規格堤防整備は、土地収用を前提としない任意の事業であるため、河川管理者としては高規格堤防整備の盛土や盛土に伴う移転について土地所有者の同意が必要である。」と指摘しています。
 これに対し、被告国は、今回の盛土工事を行う権限として、次のとおり主張します。土地区画整理事業の施行者である被告江戸川区は、本件地区について、土地区画整理法100条の2に基づく広範な管理権を有している。その管理権に基づき、江戸川区は、国に盛土工事を行わせる内容を含む本件基本協定書を締結し、国は、この合意に基づき工事を行っているから適法だと。つまり、住民の同意がなくても、区画整理事業の施行者である江戸川区の合意があるから適法なのだと主張しています。
 しかし、区画整理法100条の2は、国の工事権限の法的根拠になりえないことは、条文文言からも、区画整理法の構造からも、立法者の意思からも明らかなのです。
 区画整理法100条の2は、施行者の「管理」権限を規定したもので、工事権限は同法80条に規定があります。最大7メートルの盛土を行う大規模な土地の形質変更を伴うスーパー堤防工事を「管理」と呼ぶのは、通常の用語としても、法律用語としても不可能です。
 国は、この裁判を起こされてから、実に6カ月もの間、本件土地上でスーパー堤防工事をする法的根拠を示せませんでした(にもかかわらず、工事の中止を求めても聞き入れず、工事だけを進行させていました)。
 また、国土交通省(江戸川河川事務所の課長)は、法廷の外では、スーパー堤防工事をするには、それについての住民の合意が必要であると説明していました。
 ところが、ようやく今年5月になって出してきた準備書面では、住民の合意は不要であるといい、また、区画整理法80条では説明がつかないため、苦し紛れに100条の2を持ち出していますが、これが認められないことは先述したとおりです。
 国は判決を待たずに直ちに工事を中止すべきです。
 
4 今後について
 次回は、少し先で、11月4日午前10時から東京地方裁判所103号法廷で開かれます。
 弁護団は、次回までに、スーパー堤防事業が必要であり有益であるとする国に対する反論を行います。国は、有用性の根拠として費用便益計算(かかる費用より効果のほうが上回るとする計算)の結果を証拠として出してきていますが、この根拠を徹底的にたたき、スーパー堤防事業が全く無駄で不合理きわまる事業であることを主張する予定です。
 法治国家である以上、法を無視して住民らの権利を侵害する行政の暴力を許すわけには行きません。
 みなさま 江戸川区スーパー堤防差止裁判を、どうぞ応援してください。
弁護士活動コラム   2015年10月07日   admin