カネボウ白斑被害について、賠償交渉の申入れを行いました 【弁護士 伊藤 真樹子】

 カネボウ美白化粧品白斑被害救済東京弁護団は、大手化粧品メーカーである㈱カネボウ化粧品が、美白に効果のある物質として開発したロドデノール入り化粧品(以下、「本件化粧品」)を使用したことにより、白斑が発症した被害者の救済を目的として、東京三弁護士会の有志から結成された弁護団です。

 弁護団においては、被害者説明会や110番活動を複数回行ったうえで、被害状況の集約・分析を行ってきました。被害の程度は様々ですが、酷い場合には顔全体が強い濃淡のあるまだら状になり、そのため、人目を気にしたり、紫外線による悪化を恐れて外出を控えたり、人との交流に消極的になるなど、被害者は多大な精神的苦痛を被っています。

 このような深刻な被害状況を損害として適正に判定する必要がありますが、化粧品による深刻な白斑被害というこれまでにない被害であることから、算定基準を定めるにあたっては慎重な議論を要しました。

 また、㈱カネボウの法的責任についても検討を重ね、製造物責任法に基づく責任を主張した場合に予測される開発危険の抗弁が適用される場面ではないこと、安全性確保義務違反により不法行為に基づく責任を負うことを明確にしました。

 

 他方で、㈱カネボウ化粧品は、昨年7月4日に本件化粧品の自主回収を発表して以降、被害者を個別に訪問し、医療費と交通費の支払いを開始しましたが、白斑は完治するとの判断のもとに、休業補償や慰謝料は白斑の症状が完治した後に支給するとの姿勢でした。しかし、本年6月になって、回復の遅い被害者、回復傾向が見られない被害者がいることから、補償内容の見直しを行い、医療費と交通費のほか、精神的慰謝料と休業補償の一時金を支払うほか、回復傾向が見られない被害者のために後遺症慰謝料相当の補償の検討をしていると発表するようになりました。

 しかし、どのような治療を受ければいつの時点で白斑が治癒するのか全く解明されていない状態で、白斑は治癒する、治癒した被害者は大勢いると喧伝すること自体が不誠実でありますし、休業補償や精神的慰謝料の一時金の支払いが、いかなる基準に基づいて、対象となる被害者を決定し、補償金額を算定するのか、全く明らかにされていません。さらには、白斑が治癒せずに残存した場合の逸失利益や慰謝料についても、具体的な対応を明確にしていません。

 

 このような状況を踏まえ、弁護団は、本年7月4日、㈱カネボウ化粧品に対し、賠償交渉の申入れを行いました。訴訟提起ではなく、賠償交渉の申入れを行った理由は、①被害者の早期の被害回復を企図したこと、②㈱カネボウ化粧品において、自主回収を発表してから一貫して、「お客様には完治まで責任をもって対応する基本方針」をとっていることなどからです。

 しかし、㈱カネボウ化粧品は、弁護団及び被害者が直接賠償交渉の申入れに出向くことを拒絶し、代理人弁護士を通じて申入れをするよう事前に通知してきました。弁護団は、代理人弁護士に対し、㈱カネボウ化粧品が直接交渉の申入れを受けるよう再三に亘って求めましたが、㈱カネボウ化粧品側はこれに応じず、やむなく、弁護団は、代理人弁護士に賠償交渉の申入書を提出することとなりました。㈱カネボウ化粧品のこのような対応は、被害者に真摯に向き合おうとする姿勢が全く欠落したものであり、極めて不誠実な対応と言わざるを得ません。

 弁護団としては、このような㈱カネボウ化粧品の姿勢に対し、同社が法的責任のみならず、重大な社会的責任も負っていることを広く訴えるべく、今後は、被害者団の結成や多様な運動の展開なども視野に入れ、活動していく考えです。